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此方は漫画家・吉原基貴のブログです。 HP・Twitterと併せてお楽しみいただければ幸いです。
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僕はネームに詰まるとゲームセンターへ行く。

作画作業中は、殆ど息抜きも他の事もせずに、描き続ける。それは、浸けペンを描きなれてきた手の感触を、他の作業で失いたくないからである。
しかし、手よりも頭を使うネーム(漫画そのものの下書きのようなものです)という作業は、一度思考が煮詰まると厄介で、適度なクールダウンが必要になる。

いつものように、ゲームセンターの階段を降り、格闘ゲームにコインを入れる。

プレイするゲームは、いつも同じだ。
『STREET FIGHTER Ⅲ 3RD STRIKE』
ゲーム業界に『格闘ゲーム』というジャンルを打ち立てた『STREET FIGHTER』シリーズの続編にあたる。
稼動して10余年、僕はこのゲームだけをプレイし続けている。

漫画と違う、ゲームというシンプルな作業に没頭する事で、精神のリフレッシュを謀ろうという魂胆らしい。

しかし、格闘ゲームの真の面白みは、対人との対戦にある。
自分の向かいの、対となる同ゲームの筐体へ、何者かが座り、コインを入れ、ゲームの開始ボタンを押す。
その瞬間、僕のリフレッシュの時間は終わりを告げ、眼の前の対戦相手との勝負へ全神経が注がれる。
こうなると、当初の用途とは、全く異なってくる。気分転換どころの騒ぎではない。
気分は昂揚し、掻かなくてもよい汗が滲み、手には余計な力が入る。
そして、いつものように相手に負けて、熱くなり、今度は此方から挑戦をしかけ、負けるのが繰り返される。それは、所持金に危機が及ぶまで続く。
肉体も精神もへとへとな負け犬となり、いつものように、ゲームセンターを跡にする。

物凄くストレスが溜まるのだが、何故なのか、こんな瞬間が楽しくて仕方が無い。
そして、こんな生活が、漫画家になってから永く続いている。

学生時代は、よく学校をサボってゲームセンターへ行った(全く褒められた事では無いが)。
特に格闘ゲームが好きで、特別巧いわけではなく、少ない小遣いの殆どはゲームの筐体へと消えた。
学校の成績も下がり、果ては進学の道が閉ざされるほどのめり込んだ(それだけが原因ではないが)。
それでも、僕はゲームセンターへ通った。
煙草の煙と、敗北の悔しさと、勝利の喜び。自己への向上心と、他者との情報交換。
たった50円という1プレイに秘められた、小さな野心と矜持が、筐体の一つ一つから感じられるようで、僕もその、空気を彩る一人の闘士になったようだった。、たとえゲームに敗北しても、何故負けたのか、相手の動きを見て、自分のミスを修正し、また挑む。他人のプレイを観ているのも、参考になる技術は盗み、練習し、実戦で活用してみる。
何もかもが、楽しくて仕方が無かった。
友人とも何度も対戦した。外が真っ暗になるまでゲームセンターに居座った。

ゲームセンターは、紛れも無く、僕の青春の染の一つだった。

何故ネームに詰まると、ゲームセンターに足を運んでしまうのか、自分でもよくわからない。
あの頃よりゲームに費やす時間は明らかに減り、腕も格段に落ちている。
自宅にも、同じゲームを購入し持っている。自宅でもたまに独りで練習している。負けてばかりで、一つも上達しない。
それでも、これからも僕はゲームセンターへ行くだろう。それは、学校生活に馴染めなかった僕を精神的に成熟させてくれた、ゲームセンターという存在への御礼や敬意でもあり、時代の様々な変化に伴い、次々と消えていった青春の跡を、少しでも永く、出来れば絶やさずにおきたいという我儘な願望でもあり、単にゲームが好きな僕の想いでもある。

ひょっとしたら、ゲームセンターという青春へ還る事で、僕自身も、背負うものも無く、気負うことも無く、何も考えて無かったあの時代に還る事が出来ているのかもしれない。

多分,今週また僕はゲームセンターへ行く事になる。
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無題
今はゲーセンにも行かなくなってしまって、ある程度手軽なネット対戦という事でスパ4なんだが、
仕事で眠くなったとき2,3試合本当に真剣にやろうと決めてプレイするとこれが目が覚める覚める。
スパ4の良し悪しはまた飲んだ時にでも聞いてもらえればいいとして
差しあいするのにまばき我慢してるとこれだよなと思う。

最近はアニメやゲームなど以前よりも多くの人と仕事で会う機会が増えたけどそんな中格ゲーマーがいると仲間意識を持ってしまうw
傍から見ると細かい部分に一喜一憂してきた人間なんだなと思って。
2011/11/21(Mon)08:28:58 編集
Re:無題
ゲーセンの空気もゲームも好きだけど、個人的にはあのゲーム筐体の独特の形状が好きなんだよね。
未だに、筐体を購入して、自分の部屋でプレイする夢は棄てきれない。いつか実現したら、供託代として50円一日フリプでやらせたる。
【2011/11/21 17:06】
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1980/04/28
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漫画家
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格闘ゲーム(3rd strike)
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